忘れられないひと【完結】
改めて、卓也から電話が掛かってきた時
冗談混じりに「女の子声掛ける?」なんて聞いてきた
俺の慰め会でもしてくれるつもりなのか
「いるかよ」とだけ返事して電話を切った
こいつ、優紀ちゃんに言うぞ
そう思いながらも、卓也は優紀ちゃんと付き合ってからはコンパ紛いの飲み会にも一切参加していない
仕事の付き合いで仕方ないときは、ちゃんと報告して誠意を見せていた
金曜日に話をしよう
卓也が何と言おうと、頼み込んでやる
「悪い、遅くなった」
「いや、俺も今着いたとこなんだ~
恭介は日本に帰ってきたばっかりで忙しいだろ
大丈夫だったか?」
大丈夫か、って
あの時の電話はかなり一方的だったぞ
今更に気遣いを見せる悪友に笑えてきた
「あれ?恭介………なんか、吹っ切れた?」
「あ、いや…………その事だけど…………」
「まぁまぁ、先ずは乾杯しようぜー」
卓也は俺の言わんとすることも察知してるかの様に話題を代えた
俺は渋々、飲み物を頼んだ
とりあえず、酒は一杯目だけにしておこう
卓也の方が一枚も二枚も上だ
勘のいい卓也だ
きっと、俺の変化にも気付いてる
なし崩しに何も話できずに終わる可能性もありえる
「かんぱーい」
自分のグラスを嬉しそうに俺のグラスに打ち付ける姿に
俺はもう一度、気合いを入れ直した