忘れられないひと【完結】
"七年ぶりに女性を抱いたよ"
初めて紗也を抱いた時に、そう、はっきり伝えた
きっと紗也も今、その"七年"の意味をわかっているはずだ
「俺との事を考えてほしい
もちろん、婚約破棄に関しての慰謝料は俺が持つから」
婚約破棄………
それは言葉にする以上に重たいことだ
それでも、諦められない
「恭介さん!」
「え?」
突然紗也の大きな声に驚いた
そんな声は聞いたことが無かった
いつも、穏やかで
「あの、さっきから、結婚とか婚約って………」
「あー、…………紗也が結婚するって卓也から聞いたよ」
俺が知っていた事に負い目があるのだろう
やっぱり、隠すつもりだったのか
いや、本来ならこのまま会うことさえ無かったはずなのだから言う必要なんてなかったんだ
「あ、あの、誰が誰と?」
「紗也が、なんとか部長と」
たぶん、あの日紗也に告白していたやつだろう
やっぱり、諦めて無かったんだ
「私は原田部長とは結婚しません、そもそも付き合っても居ません」
「………え?」
原田部長と言うのか………
いや、そんな事より!
紗也からの言葉に期待してしまう
「新しい恋を探すつもりでした」
新しい恋
それは、俺ではないと言うことだ
「でも、出来るはずないですよね?」
「え?」
紗也はそっと、俺のの手に触れた
久しぶりの紗也の温もり
離したくない