忘れられないひと【完結】





「だって、私の心はずっと恭介さんを待ってたの
私に触れるのも恭介さんじゃないと嫌
私だって、恭介さんが、好きっっ…………」


全身が震えた


もう、離さない



「きゃっ、え?」


俺は堪らずに紗也の手を掴んで、そのまま会計を済まして店を出た
気持ちが逸って早歩きになっているのはわかっていた


紗也がぎゅっと手を握ってきて、少しだけスピードを落としたが落とせるはずない


早く
早く


タクシーに乗って、着いたのは自分のマンション
紗也を愛した場所ではない
ニューヨークに行くときに解約したから
紗也は知らない



「まだ、荷物片付いてないし何もないけど」


紗也をソファーに座らせた


「紗也…………」


紗也の前に座って両手を握りしめた
祈るように紗也の手に唇を寄せた

この手をもう離さない
俺の傍にずっと居てほしい

ピリッと電流が流れる
やっぱり、紗也じゃないとダメだ

俺の全身が紗也を欲している


「紗也…………抱きたい」


一年ぶりのキス


「んん…………ん」


逃げようとする紗也をしっかり抱き寄せた
逃がさない
もう二度と

紗也、俺に囲われて


「我慢できない、紗也…………ここで抱きたい」

「恭介さ、ん………シャワー………」

「ダメ、待てない………もう、離れたくない」



あの時と同じだ
紗也を感じたい
紗也に触れたい


俺は紗也の前だと、ただの男だ



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