忘れられないひと【完結】



邪な気持ちなんて持つもんじゃない
相手は紗也だ
俺が勝てるはずないんだ


ふっと、笑った紗也にピクリとまた眉間に皺が寄る
その笑顔は俺にじゃない

じゃあ、誰にだ?
何を思い出した?


「今、何を思い出してる?」

「え?」


自分でもその声に驚いた
こんな、声が出るのだと


「いま、誰のこと思い出していた?」

「いや、別に、なにも」


紗也の答えには納得できない
それなら、お預け状態を解消してもらおう

その笑顔は気に入らないから
直ぐにソファーに押し倒した


「き、恭介さん?」

「何を思い出してた?言わないとここで抱くよ?」

「え、あの、」


紗也が嫌がっても止めてやらない
紗也はまだ、俺の気持ちの大きさがわかってない

俺と居るのに、何を思い出してあんな笑顔を…………


「き、恭介さん!い、言いますから!」


身体を這っていた手を止める
残念半分

でも、笑顔の理由は聞かないと納得できない
紗也の手を引いて、起き上がった紗也を真っ直ぐに見詰めた


「残念、じゃあ言って」

「う、あ、あの………」


紗也の目尻は恥ずかしいのか真っ赤だ
見たことがない紗也の表情に欲情が沸き上がってくるのを必死で抑えた


「紗也」

「あ、あの、わ、笑わないでくださいね
き、恭介さんが、あの、男子とそんな話をしていたって聞いて、女子もそうだなぁって………
女子も男子と同じだなぁって」

「どんな話?」

「う、あ、は、初めての時のこととか、話したり…………」


はじめて?




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