忘れられないひと【完結】
は?
それは、俺が紗也を困らせてしまった話と同じで
所謂、女子特有の話
なんとなく、気恥ずかしくなった自分を奮い立たせたのは"初めて"の言葉
「紗也の、はじ、めて…………」
「恭介さん?」
声に出して段々現実味を帯びる
紗也が恥ずかしげに俯かせていた顔を上げた途端、「ひっ」と声を上げて口を押さえていた
紗也はその声は聞こえていないと思ってるだろうな
でも、それほどに今の自分の形相は自覚している
「あ、あの………」
「くそっ!紗也の初めてとか…………
俺がもらいたかった!」
俺と付き合う一ヶ月前に別れたと言っていた
それ以前にも彼氏がいたのもわかる
紗也は魅力的だ
男達が黙ってるはずない
六歳の年の差を何度恨み
紗也を抱いた男に何度嫉妬したか
それでも、今、紗也を抱いているのは俺だと言う優越感を感じたりもしていた
「私も…………もっと早くに恭介さんに出会いたかったです」
俺も紗也しか知らない
紗也も俺しか知らない
そんな二人なら
幸せだったはず、ううん、幸せだ
そんな妄想をしたのは一度や二度ではない
ぎゅっと紗也を抱き締めた
もう、俺の紗也だ
俺の嫁さんだ
「紗也……………俺は初めてなんだ」
「え?」
「さっきの話だけど………
セックスがいいとか、身体の相性がいいとか…………」
「は、はい」
また、恥ずかしそうに俯いてしまう紗也
髪にそっと唇を寄せた