ブライダルベールの花籠を君に【短編集】
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「おはよ、彩。」

『おはよう、響くん。』

いつもの時間に家を出て、響くんと学校に向かって歩き出す。

「今日は一段とさみぃな。」

『そうだね。息が白くなりそう。雪、降るかな?』

「どうだろうな。」

しん、と静まり返った住宅街。竜也がいなくなってから初めての冬。それはとても、驚く程に静かだ。

竜也が私に最後に別れを告げに来てくれた秋。最初は私は竜也のことを忘れてしまった。きっと、逃げたかったからなのだう。あんなにも大事に思ってくれていたのに、何故、忘れようと思ったのか。

それを選んだのは自分だったはずなのに、今となってはその行動が分からない。

竜也がいなくなった後も、私が竜也の記憶を思い出したあとも、私は星ヶ丘に通う。まぁ、当たり前のことなのだけれど、お母さんは私が人から聞いて竜也のことを思い出さないように星ヶ丘に転校させたから。

『今日は授業、何があったっけ?』

「化学と世界史?とかじゃね?あとは忘れた。」

『あー、世界史かぁ。世界史眠くなるんだよねぇ。響くんは眠くならない?』

「眠くはならねぇけど、あの先生の字、汚すぎて読めねぇな。」

『確かに。テストのあとのアンケートで何回も指摘されてるのにね。』

会話があまり続かなくて、普段竜也がどれだけムードメーカー的存在だったのかを思い知ることが増えた。
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