ブライダルベールの花籠を君に【短編集】
5
いつかの恋の話をしようか

初恋がいつだったかは。明確な時期は分からない。気がついたら、好きで恋におちていた。

最初は、優しいお兄ちゃんだと思っていただけだったはずなのに、いつの間にか好きな人へと変わっていて。


時期は、明確では無いくせに好きになった人は明確に覚えている。まるで、昨日の事のように。

その人との、別れも。明確に、今でも私の胸の中で生き続けている。

もう、高校を卒業して、大学も卒業して、社会人になったというのに。

私は、その人と別れてからは彼氏を作ったことがない。

未練がましいと言われるかもしれない。自己満なのかもしれない。

相手はそう望んでいないかもしれない。


それでも。だけど、忘れたくなくて。

最後に笑いあった人も。キスした人も。手を繋いだ人も。

誰にも、上書きして欲しくなくて。

居ないということは分かっているのに、それでも、いるような気がしてしまうんだ。

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