俺、男装少女だから。
落ち着いてるさ。



「全ては貴女の母親の頼みさ。」



『は?』



「“女としてお前を育てたい。社長になんてしなくていい。”と言いました。
“酷いこと言った人の顔を見たら思い出すから顔を合わせないで。”と言われました。」



ただそれだけです。と素っ気なく言って窓の向こうに顔を背けた。



『じゃあ、なんで。』



「それならそうと、那智様にお伝えすればよかったじゃないですか。
どうして、いらいなどと・・・」



俺の言葉を遮って隣に立ったカエデが口を開いた。



「当時、那智は僕に褒められることが好きだった。
そんな子供に“社長にならなくてもいいですよ。”なんて言っても聞かないでしょう?」



『・・・なんだよ、それ。
それじゃあ』



それじゃあ、俺の



『おれの勘違い・・・』



「貴女は愛されていましたよ。」
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