俺、男装少女だから。
『お疲れ様でした〜。』



「おぉ、おつかれ。」



フードを深く被って、バーの裏口から出る。
明るい時間帯とは違ってそこは静まりかえっていた。
この道にいる人間はどう見ても裏の奴ら。



俺はもう一度、フードを被り直して表通りに出る。
裏通りよりも裏の人間は数える程しかいない。
もう朝方の5時だから、スーツを着たサラリーマンが、駅に向かって足を運んでいた。



静かに玄関を開けて中に入ると、予想通り静まり返っていた。
冷蔵庫から水を1本とり、コクリと喉を鳴らして飲む。



ダイニングテーブルに何か置いてあることに気づいて、近寄って見ると[那智くんへ]と綺麗な字で書かれたメモとおにぎりがあった。



[那智くんへ
バイトお疲れ様です。
お腹すいてるかなぁと思って、おにぎり作りました。
良ければ食べてくださいね。
いらなかったら食べなくて大丈夫ですので、そのまま置いておいてください。
透也]
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