俺、男装少女だから。
『いや、直接言えよ。』



思わず声に出してつっこんでしまった。



さて、次のバイト行きますか。



空になった紙コップをクシャりと潰してゴミ箱に投げ捨てて店を出る。
カフェからそう遠くない場所にある次の働き先。



薄暗い細い路地にあるバー。
CLOSEの札が掛かっている扉なんて気にしない。



『こんちゃ~。』



「おぉ那智。
まだ早くねぇか?」



『そう?
まぁいいじゃん。』



「賄い作っけど食べるか?」



俺が食べないって言うの知ってても聞いてくる。



『分かってるっしょ?』



「おい、那智」



『ねぇ!矢崎さん?
賄いなんかよりも俺は情報が欲しいんだ。分かってんだろ?』



話を遮ってカウンターに立つ矢崎さんの近くまで寄る。



『ねぇ俺がいつもへらへらしてなんも感じてないように見える?』



「・・・」



『な〜てね、冗談。
そんじゃ着替えてくるわー。』



笑って、オーナーである矢崎の肩をポンポンっと軽く叩いて横を通り過ぎる。
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