俺、男装少女だから。
ロッカーに入っていた黒のワイシャツに黒のスキニージーンズを履く。
扉に付けている鏡が自分の顔を映す。



ひどい顔。
こんな顔じゃ前出れないな。



鏡に映る俺から目を背けるように扉を閉めてふぅと深く息を吐く。



さて、頑張るか。
あと5分もすれば、開店する時間だ。



『矢崎さん、今日の予約リストないよ。』



「あ、あぁ。」



ぎこちなく俺の目を見る矢崎さん。



『矢崎さんって分かりやすいってよく言われるっしょっ?』



「えっ?あ。
・・・ごめん。」



『ふっ!』



どもりすぎだろ。



「笑うなよ、恥ずかしいだろ!
・・・おら、リスト。」



『ほい、サンキュ。』



リストを受け取って、名前と時間を確認していく。




ここはただのバーではない。
警察上層部の奴ら、政治家。
経営者と大手企業の幹部。
所謂、社会や世界の闇を知る奴らが集まる場所。
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