舞風
急転
時は再び流れ、新緑の眩しい夏。二人は出会った河原で出会うように。

市助はその間に朔子の事を知る事となる。

中でも驚いたのは、朔子がこの近辺では有名な華族である鈴木康太郎(すずき・こうたろう)の娘だと言う事。

朔子が身に付けていた海老色の袴から、市助は朔子が自分とは身分の違う存在だと思っていた。

まさか天と地の差のように離れているとまでは想像もしなかっただろう。一時は友達の付き合いを恐ろしくなり止めようともしたが、

優しく微笑む朔子がまるで天女のようにも感じた市助は、そうする事が罰当たりだとその考えを捨てた。


「市助さんは本当に楽しい方ですね」

「自分は楽しい人間なんかないですよ」


否定するも朔子は変わらず肯定を続ける。市助が天女のようと感じた笑みを浮かべながら。

朔子の笑みは絶えない。市助はその笑みに見惚れる事が日に日に増加していった。

しかしそんな朔子はとある話題だけには陰を落とす。それは市助の夢の事。一度その部分に触れた時。

微かに頬笑みそして悟られないように、と少し俯く。

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