叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい
『……以上のことに注意して、生活するようにしてください。』
ようやく藤堂先生からの話が終わって、前を見ると藤堂先生が私の目を見てる……。
『また聞いてなかっただろ?』
『すいません、帰ったら私からもう一度話します。』
パパ、そんなことしなくてもいいの。
なんとなくは聞いたから。
『しっかり休んでくるんだぞ。』
「……はい。」
今日から数日間、家に帰る。
パパは仕事が忙しいのに、私の迎えまでしてくれて。
本当に迷惑かけてるって実感してる。
『さあ、帰って久しぶりにアレ観るか?』
席を立ちながらパパが私に話しかける。
久しぶりだな、前回の退院の時はパパは仕事、私は学校で忙しかったし。
『アレって、何ですか?』
藤堂先生が聞き返す。
『そんな大したものではないんですが…。
数々の溜まりに溜まった録画してあるテレビ番組です。
私は日頃仕事で観られなくて、美咲は入院が多いので、その間のもののドラマとかドキュメンタリー番組とか観るんです。』
『へぇ、そうなんですね。それは楽しみですね。』
嬉しそうなパパの顔を見て、藤堂先生も嬉しそう。
私とパパの唯一の楽しみ。
外に遊びに行くことも昔からほとんどなくて。食べることも同じ食事はできないから、共通してできることって言ったらテレビ観ることくらい。
でも、テレビ番組ってよっぽど気に入ったものでない限り、何度も観ないから、パパはなるべく私のいない時は私と観れるようにって録画しておいてくれる。
『では、何かありましたらいつでも連絡ください。』
藤堂先生、よっぽど連絡して欲しいのか、今日の退院の時までずっとそう言っている。
私たちは先生に挨拶して、ナースステーションの山田さんに挨拶して、そしてちょうどやってきた田中先生にも挨拶して、病院を後にして家路についた。