叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい
「パパー、どこまで観た?」
私が帰ってくると分かっていたからなのか、リビングも私の部屋も綺麗に整頓されていた。
帰って早々にリビングのソファに腰掛けてテレビをつけた。
『美咲ー、その前に手洗いうがいはしてきて。帰り際に藤堂先生に言われただろー?』
「はいはーい。」
そんなこと言われたかな…と思いながらもパパの要求には大抵応える。
洗面所に行くと今までと違った香りがした。
ハンドソープかな…。
周りを見渡すけど、分からない。
浴室のドアが開いていたので、閉めようとすると……
あれ?
シャンプーが変わってる……のかな?
パパはいつも私に合わせてシャンプーを使っていた。
その私のシャンプーはそのままで、パパのシャンプーなのか、男性が使うタイプのシャンプーにボディソープまでいつもと違うものが置かれていた。
パパも自分の匂いを気にするようになったんだろうな……。
この時私は、他に何も感じることはなかった。
『パパー、シャンプーとボディソープ、変えた?』
「あ、あぁ。美咲のばかりパパが使ってたら、美咲のものがなくなっちゃうだろ?」
今まで私のシャンプーがなくなっても、気にもしてなかったのに今更何を。と思ったけど、口に出すのは辞めておこう。
私は後で知るのだけど、この時パパは、私に大切な話をしようか、やめようか…迷っていたらしい。
「さあ、観よっかなー。」
「あれ?少し観てるものもある?」
初めて観る番組には、印があるけど、ドラマの所々でその印がなくなっていた。
『あぁ…。中は観てないけど、間違えてボタン押しちゃった。』
なんかよく分からないけど、まぁいいか。
ソファにパパが座り、ようやくビデオ鑑賞となった。