叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい

「ちょっと、ありさー!そんなところに乗らないでよっ!」






ベッドの上でうつ伏せになった私のお尻の上にいるのは、ありさ。




『しょうがないでしょー!自分から裸足で出てったんだもん。』






そうだけど…。言い返せないままでいると、すぐに





「いったーい!」






足の裏に激痛が走る……。





『はい、我慢我慢。』





ありさのパパ、田中先生が私の足の裏を予告なしに消毒してきた。





「何か言ってください!」





『しょうがないでしょー、自分から裸足で出てったんだから。』






ありさの口調を真似た田中先生が同じセリフを言う。






もうっ……





怒りながらもまたここに戻ってこれたことが少し嬉しくて、笑いながら涙が溢れてくる。





「う〜〜〜……痛いよ。」





枕に顔を沈めて声を押し殺す。





『辛かったね、美咲……』





ありさが私の上に乗ったまま、頭を優しく撫でる。





「ありざー……」






『ん?』





「あだじさ……、何が大事なのか分かんない。」





『何だ?大事って?』






「パパとパパの好きな人が大事なのか…それとも死んじゃったママが大事なのか。





これからのパパの幸せを思えば、パパの気持ちを優先するべきなんだろうけど。





死んだママはどうなるんだろ……。」






『美咲……。』






私たちの会話を聞いていた田中先生が口を開く。





『美咲ちゃん……、大事なことを忘れてる。』






枕から顔を上げて、なにかと聞き返せば、治療は終わったようで、器具を片付けながら田中先生が私の顔を見る。






『一番大事なのは、まずは美咲ちゃんの気持ちなんじゃないかな?』





え?私?





なぜに?私は別に……。





『美咲ちゃんのお父さんやその相手の方、そして亡くなったお母さんも、美咲ちゃんの幸せを一番に考えてる。





それが親だから。
親だから、自分の幸せだけを願ってるんだよ。』







親だからって、それでもよく分からない。





「なんでパパは、私のために結婚するの…?」





『全てが美咲ちゃんのためではないかもしれない。無理に好きになった相手ではないだろうし。





本人から聞いてみた方がいいんじゃなちかな?』





パパから…




一対一になって話すなんて、できるかな……。また飛び出したりしないかな…。






うつ伏せのままパパと話そうか迷っていると、ありさが私の目の前に来る。



『一緒に聞いたあげようか?』





ありさの顔を見上げる。





『一人が怖いんでしょ?今日みたいにならないか。』





さすが、ありさ…。私のことをわかってる。



と同時に頷く。






『そばで聞いてるから。一人で聞きたかったら、言ってくれれば席を外す。』





「いやっ、最後まで必ずいてっ。」




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