叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい

昔はここによく来てたな・・・。




入院中の子供達が遊ぶことのできるプレイルームには、たくさんの子供達で埋まっていた。




ベッドにいる子供達も、ここに来ると笑顔で遊びに夢中になっている。




病気だなんて思えない・・・。




私は廊下から一番死角になる本棚の奥に腰を下ろした。




『え?だれ?』




腰を下ろすと同時に、背後で声がして振り向くと、




小学校高学年くらいの男の子が、一人でお菓子を食べていた。




プレイルーム内での飲食は禁止されていて、きっとこの子は看護師さんから隠れてお菓子を食べていたんだと思うけど。



まぁ、私にもその気持ちがわかるからね。




声を掛けずに前を向く。





『おい・・・、誰にも言うなよ。』





モグモグと食べながら、一体あなたは私をいくつだと思っているの?と聞きたくなるような生意気な言葉で口止めをしてくる。





振り返りながら、





「言わないから。」




そう言うが早いか、男の子は私に近づいてきたかと思うと、




「うっ!」




喋った隙に空いた私の口に、持っていたスナック菓子を一握り分、詰め込んだ。




「ゴクッ」





うわっ!!!!!!




そのお菓子は、噛むこともなく私の喉奥に入り、あっという間に胃の中に入って行った。




「え?え?何してんの?」




『共犯だ。これで誰にも言えないだろう。』




そういうことか・・・。いや、違う違う。





「誰にも言わないって言ったでしょうが!」



あまりにも頭に来て、握りしめた拳を振り上げると、




『おぉ怖い怖い。』




と言って、食べていたお菓子の袋をパジャマに押し込みながら、私を横切って、プレイルームから出ていった。





呆気にとられていたけど、次第に事の重大さに気づく。





「や、やばいよね・・・。」





口元を抑えながら、今あったことを思い出してみたけど、私は何を口にして丸呑みしてしまったのだろう。





そして、あの子は一体誰だったのだろう。





立ち去るあの子を止めて、持っていたお菓子を見るだけで良かったのに。





何かわからないものを、しかも噛むことなく胃に入れてしまった。





このあと私の胃に、何か恐ろしいことが起きるのではないかと想像するだけで、身震いした。





そして脳裏に浮かんだのは、





藤堂先生の怒る顔




だった・・・・。





ってか、早く病室に戻らないと!
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