叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい
プレイルームから少し離れた廊下を足早に歩いて部屋に向かう。
あぁ、どうしよう。さっきのことから、今のことまで・・・。
藤堂先生が先にいたらどうしよう。
なんて言ったらいいんだろう。
そんなことばかり考えていたら、病室に着くのもすぐだった。
開いた病室の扉から、恐る恐る自分のベッドを見る。
う・・・・・
いた。
すでに先に藤堂先生がいる。
しかも、もう一人。
田中先生まで・・・・・。
私に気づいた藤堂先生が、どこに行ってたんだ?という目つきで私を睨む。
「えっと・・・トイレに。」
『長かったな。』
その低音を聞いただけど、普通の怒り方とは違うことが瞬時にわかった。
「ご、ごめんなさい。」
こういう時は謝っておくに限る。
あぁ・・・嫌だ嫌だ。
二人から向けられた視線が怖い。
誰か助け舟を・・・と同室のあの子を見てみるけど、こういう時に限ってカーテンが締まっている。
ベッドに横になって布団をかぶる。
『腕出して。』
そう言われ、言われたまま腕を出した瞬間に、気づいた。
点滴!?
慌ててひっこめると、
『出しなさい。』
と言いながら、私の腕を強引に引き出す。
それ以上動かせば、逆に痛いことは重々承知しているので、観念して力を抜く。
『熱があるんだから、フラフラしてないで、寝ていなさい。』
さっきの検査中のことが嘘のように怒られる。
『美咲ちゃん。熱以外はどこか痛いとか怠いとか、あるかな?』
田中先生はまだ私に優しい。
一時帰宅するまでは厳しい時も多々あったけど、一旦リセットされたのか、前のように優しい。
「いや、別に。何もありません。」
隣からのギラギラとした視線を気にしながら、田中先生の方を向いて答える。
『はは、美咲ちゃんは必ず、何もないって答える。』
苦笑しながら返す田中先生に、
「ほんっとに、何を聞いてもいつもそうだからなぁ。」
と口を出してくる藤堂先生。
本当にないんだからっ!
信じてよっ。
と言いながらも、さっきの出来事が頭をチラついてしまう。
気づくと下を向いていた。
『何々?
何かあるの?』
ベッドに腰掛けて私の顔を覗き込む田中先生。
「……何もないです。」
そう小さく答えても、なかなか顔を上げれない。
『何かあれば、いつでも言ってね。』
まるで私が何か隠しているかのように。
まぁ、隠してるんだけど…。
『また変なもん食ってたら、許さないからなぁ。』
冗談のように言う藤堂先生……。
それ、冗談に聞こえませんって……。
「はい……。」
なんとか小さく答えた。
少しして二人が部屋から出て行くと、一気に緊張がほぐれて、一緒に疲れが出たのか、身体中が熱く息苦しくなった。
とにかく今日はもう寝よう。
まだ夕方にもなっていないのに、目を閉じた。