叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい
「実は……昨日検査の後に、プレイルームに行ったら……」
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私が悪い訳ではないのに、なぜか泣きながら昨日のことを話した。
プレイルームにいた男の子がお菓子を食べているところを目撃してしまい、さらに口に入れられたお菓子を飲み込んでしまったことを。
なんでこうなったかと言えば、私が検査の後にプレイルームに寄り道したからなんだけど。
ただ、どうしても病室にあのままこもるのは嫌だった。
一通り話し終えた。
『よく話してくれたな。』
今までに聞いたことのないくらい優しい声の藤堂先生が、私の頭を撫でる。
思わず顔を上げると、いつもしかめっ面の先生の顔は温かく包み込むような顔。
『いつもなら絶対に言わないのに。』
ハハと笑った顔まで優しい。
その顔に話して良かったと思えた。
『今は下痢が治ってるってこと?他に何かいつもと違うところはあるのか?』
いつも見せない先生の顔は、次第に元に戻っていく。
「下痢はすっかり治っていて。
多少…ここら辺に違和感のような。」
とお腹をさする。
『分かった。そしたら、仰向けで膝を立てて寝てみて。』
いつも触診される時のように、仰向けになる。
『ここか?』
と聞かれた瞬間っ、
「いっだい!」
押された瞬間に違和感から、激痛に変わる。
悶絶してしまうほどの痛み、体を横に向けて、脚を曲げて体を丸める。
『もう一度検査しよう。もっと詳しく……。』
そばにいた田中先生が藤堂先生に話す。
もっと詳しくって……。
それから慌ただしく、機材が部屋に運び込まれ、深呼吸して心の準備をする間もなく検査は始まった。