叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい
シャッと締まっていたカーテンを開けて入ってきた田中先生は、いつものように丸椅子に腰掛けた。
『薬に悪戦苦闘してるみたいだね。』
藤堂先生に聞いたのか、回りくどい言い方はせず、本題を口にする田中先生の顔は穏やかで目は真剣。
こういう時は下手なことは言わず黙っておくに限る。
『飲めない?』
「…………薬ばっかじゃ、気持ち悪い。」
『そしたら、これ使ってみて。』
説教じみた話が始まるかと思いきや、
机に出されたものを見ると、
おクスリ飲めたね
って……動物の絵があって…
これはまるで幼稚な患者じゃないか……。
本気で言ってるのかと思って田中先生を見る。
『これなら大丈夫じゃないかな?』
またも穏やかな声。
『あの大量の薬が、今一番の美咲ちゃんに効く治療法だから。』
そんなことは分かってるけど……。
『これでもう一度試してみて。』
そう言ってゼリーを置いて行くと、私のそばを離れた。
カーテンを締めると、足音は奥の部屋の子の方へ行った。
布団に包まって、やることもなく。
次の薬のことをなるべく考えないようにと、ゼリーは目に入らない棚の引き出しにしまった。