叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい
「冷たっ!」
額が冷たくて目を開けると、同時に頭に激痛が走り、再び目を閉じる。
ぃったぁ……。
色々考えながら何も被らずに眠ってしまったことを思い出した。
不意に体がフワッと上がる。
目を開くと
「えっ!?!?
えっ?えっ?」
さっきまで頭の中にいた藤堂先生に抱えられていた。
『布団の上に乗って寝てたら、掛けれないだろう。』
藤堂先生の頬が近くにある。
その頬に釘付けになる。
でもなぜか藤堂先生は顔を背けたまま。
『…………見過ぎだろ。』
ハッ
として我に返る。
ベッドに置かれ、布団を掛けられる。
『ってかなんで、あんなところにいたんだ!?』
やば……
また始まった。ガミガミが……。
黙ってれば無口なイケメンなのに。
『動いたせいか、熱が出てきてるぞ……。』
「えっ!」
それで頭が痛いのか。
額に濡れタオルも……。
『せっかく新しく治療を始めたのに、熱が出たら進まないだろ。』
そんなに責めないでいいのに…。
『しばらくトイレ以外部屋から出るのを禁止するぞ。
ナースステーションの隣に行くか?』
「えっ!?それだけはヤダ!」
ズキっ
喋るだけで頭が痛い……。
軽く頭に手を当てる。
『ん?どうした?』
さっきまでガミガミ言ってたのに、見られていたのか、額に手を当てられる。
「だ、大丈夫だから……。」
と頭の痛さがなくなるくらい恥ずかしさでいっぱいになって、思わず手を払っていた。
頭が痛いことを言えば、薬がまた増える…それだけは避けたい。
『なんだ?
ちゃんといいなさい。』
だけど藤堂先生にはお見通しのようで、大丈夫が通じない……。
『ちゃんと言いなさい!』
そのうち本気で怒り出しそう……。
「……頭が、痛い。」
はぁ、とため息をついてそのままナースコールで指示を出す。
『なんでいつも黙ってるんだ?』
布団を肩まで掛けながら、椅子に座る藤堂先生。
こうなったら逃げられない。
「大丈夫だから…」
『大丈夫な訳ないだろ?
大丈夫と言うやつが一番大丈夫じゃないんだからな。』
再び熱を測るように体温計を渡される。
『熱が上がってたら、薬は中断するからな。』
「えっ?そしたらまた始めに戻るってこと?」
数日間飲んできた薬はまた一からのスタートということなの?
数日間分をまた同じように飲むだけじゃなくて、飲み終わるのも数日延びてしまう……。
『まぁ、そういうことだな。』
あぁ……ショック。
「それならやめたいな……、」
ボソリと呟く。
『は?何を!?』
聞こえてただろうけど、もう一度聞かれる。
「……何でもない。」
そんな選択肢は選ばせてもらえないから。
『とりあえず今は熱を下げることだから。』
と鳴り響いた体温計を手早く脇から抜いて、体温を確認した頃に看護師さんが点滴を持ってきた。