叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい

『おはよう、美咲ちゃん。』






ん!?

思わず目を見開いた。






『今日はね、藤堂先生がお休みしたから、僕が代わりに来たよ。』





長身に色白、メガネをかけた鼻は一段と高く、笑顔しか出てこないこの顔は、




そう、私がどハマりした梶田先生。





結婚してるとは言え、やっぱり一時はものすごい愛した先生だけに(片想い)今でもその時の気持ちが蘇ってくる。






『美咲ちゃん?』






黙っている私の額に手を当て、笑顔が一瞬にして曇るけど、再びまた笑顔。






ずっと見ていたい…






と一人幸せに浸っているところに、体温を計り直され、血圧を計られ、激痛の走る喉も確認されて、腕には私の大っ嫌いな点滴を入れられて……。





梶田先生を見つめ続ける間に、全てが終わっていた。






『美咲ちゃん、かなり熱が上がってきちゃったね。喉が赤いけど、ほかに辛いところはないかな?』






このままでいてもらえるなら、何も辛くありません……。






『昨日は頭が痛かったみたいだけど。』





そんなの吹っ飛びました。





『美咲ちゃん?』






何度か顔をパチパチと叩かれて、ようやく我に返った頃、






ズキっ





痛い……。





また激痛が走る。






『頭はまだ痛そうだね。解熱剤を入れるから、口からも少しずつでいいから水分を摂るんだよ。』





はい……溺れるくらい飲みます。





『また様子見に来るからね。
今日はゆっくり休むんだよ。』






そう言いながら布団をかけ直し、胸元をトントンと、叩いてから部屋を後にした。





はぁ〜幸せなひと時。






と余韻に浸っていたのもつかの間、現実に戻った瞬間に、喉と頭の痛みが押し寄せて来た……。






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