叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい
夜遅く、パパが帰宅。
ようやく帰ってきた。ここ最近のパパは仕事でほとんど休みもない。
大丈夫かな……。
『ただいま〜
美咲、まだ起きてたの?』
「おかえり。テレビ見てたの。」
スーツを脱ぎながらリビングに入ってくるパパ。
いつもは先に寝ていて、この時間に帰ってくるパパにはあまり会っていない。
パパは私の寝てる時に部屋に少し顔を見に来てるみたいだけど、私は寝ていて分からない。
そして朝早くには家を出て行く。
最近は一緒に食事すらしていない。
私の食事は病院から指導されていて、何を食べたかも記録しなくちゃいけない。
本当ならこういう時にはママがいて、私の食事は手料理になるんだろうけど、それはうちではできないので、病院が提携している会社の出来合いの食事を温めて食べるだけ。
もちろんお弁当にもそれを持っていくこともある。
ここ最近は自分で作るようにもなって、時間のあるときは作り置きまでしてる。
見た目なんて考えないから、いやむしろ考えることができない。
だって、最後にはミキサーにかけてしまうのだから。
味も薄味。病院で栄養士さんに指導されて、先生からもオッケーされた食品、添加物の入っていない調味料を使う。
子供の時のことからだからか、味には慣れた。ただ、病院で出るドロっとしたご飯は、すごくマズイ。
添加物の入った調味料を使わないから、基本的にはただでさえ薄味に、さらに薄味になっている。
少量だけど、いつも箸が…いやスプーンが進まない……。
『明日なんだけど、急に泊まりの出張になっちゃって。』
「え!?」
突然の出張!?
この家にいて、初めてパパがいない夜。病院ではいつも一人だけど、そこには先生も看護師さんもいるし。
でもここは自分の家だけど、一人になるのは初めて…。
友達の家にお泊りすらしたことがないから。
『県外だから、どうしても泊まりになっちゃうけど大丈夫か?』
私が入院中にはパパの出張はよくあった。むしろ入院してるからできたこと。
退院してからは食事にも配慮してもらってか、一度もなかった。
「まぁ、高校生だし……大丈夫だよ。」
たぶん……。
『…………。
心配だから必ず明日の夜と明後日の朝は電話するから。絶対出てよ。』
「う、うん……。」
過保護なのか……?
確かに不安だけど。
その後、電話に出ること以外にご飯を食べること、薬を飲むこと、布団に入って寝ること、夜更かししないこと……その他いろんなことを言われて一通り頷いてからパパにおやすみと言い、部屋に入った。