叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい

『美咲ちゃんっ!美咲ちゃんっ!』







目を少し開けると誰かに呼ばれていることがハッキリとわかる。






『美咲ちゃん、起きて。』






目を開けると担当の看護師さんが目の前にいた。







夜中眠れなかったせいで、寝たのは少し前。まだお尻がヒリヒリしてる…。





そうだ、今日は検査だ……。






まだ眠気まなこで今の状況を掴めずにいた。次第に脇に体温計が挟まっていることに気づき、手で体温計を取り出してみる。






『ダメダメ!体温測ってるから。』






と藤堂先生が私の脇を抑える。






「ぇっと……。」






今のこの状態は……






『もうね、回診の時間なのよ。体温を測ってなかったから、今測ってるのよ。』






そうか。
熱は普段から自分で測っておいて、回診の時に看護師さんか先生に伝える。






いつの間にか回診なんだ。







ピピピピッ






体温が鳴りだすと、スッと脇から体温計が抜かれる。






何度だ……。








体温計を見てすぐにメモに書き込んで、体温計をしまっている。







ん?






「何度……ですか?」







聞いてみる。







『今日の検査は中止だな…。』






えっ!?なんで?昨夜あんなにトイレで頑張ったのに。






夜中の頑張りは一体なんだったのだろう。しかし、身体中がフワフワする。
寝不足なのか……。





回診は終わり、藤堂先生が看護師さんに何やら指示を言い残して部屋を後にしている。





そして段々と冷や汗が出てくるのが分かった。





ゆっくり起き上がって、





戸棚にあるカーディガンを…






とベッドからゆっくりと降りる。






うっ!?






気持ち悪っ……。





『大丈夫っ!?』






立ち上がったと同時に吐き気がやってきて、ベッド脇のゴミ箱に戻してしまった。






ひざまずきゴミ箱で何も出てこないのに嘔吐を繰り返す。





「うぅ……ぐるじぃ。」






『美咲ちゃん、気持ち悪いのね。





ゆっくり呼吸して、落ち着こうね。』






看護師さんの言う通りに呼吸する。





次第に嘔吐が収まり、立ち上がろうと脚に力を入れる。







あれ?







「立てない……。」







『美咲ちゃんっ!美咲ちゃんっ!』






気づくと力も入らずその場で仰向けに倒れていた。






『どうかしたっ!?』






藤堂先生の声でここに戻ってきたことは分かった。






でも、それからのことはあまり覚えてない。

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