恋を忘れたバレンタイン
「そうかよ…… そうやって、またガードを張ればいい…… 本当は疲れて、助けって顔してんのに……」

 そんな事しか言えない自分が悔しい。


「そんな事、あなたには関係ない……」


「そうだな…… でも、あなたが今までどんな奴と付き合ってきたかは知らないが、俺は、そいつらとは違う。あなたを、重いなんて思うほど俺は半端な気持ちじゃない。そんな、ちっぽけな男じゃない。あなたを支えられるくらいの力は身に着けたつもりだ」


「……」


 彼女は、何も言わない。
 凛々しさを保ったまま毅然と立っている。


 これ以上、何を言っても、今の彼女には届かないと思った。


「あなたは、何も分かっていない……」

 俺は、それだけ言い残すとミーティングルームのドアを閉めた。


 残された彼女がどんな気持ちなのか俺には分からなかった。俺が去ってほっとしているのだろうか?


 俺は、非常口から外に出て、冷たい空気に当たった。

 彼女は何も分かっていない。
 俺が、どれだけ彼女を想っているのか?

 そして、彼女には、文句を言いながらも甘える場所が必要なのに……

 彼女が、甘えられるくらい強くて、頼れる男になりたいと思った。
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