恋を忘れたバレンタイン
 マズイと思い、逃げようと体を起き上がらせると、彼が覆いかぶさって来た。

 そして、まるで味を確かめるように、軽いキスを何度も繰り返し始めた。


 ベッドに投げた乱暴さとは、まるで反対に、優しいキスを何度も繰り返す。

 気持ちの良いキスに、体が熱くなっていくのがわる。


 このままでは流されてしまう…… 

 だけど、大事な物にふれるようなキスに、私はいつの間にか答えていた。 

 今まで、一度だって流されて行為をした事はない。
 どちらかと言えば、体を重ねる事はあまり好きでは無い。
 場合によっては苦痛な時でさえあった。


 でも、彼のキスは、私の唇にしっくりくるような、そんなキスだ…… 


 彼の唇が、離れ、首筋へと降りてくる。


「はぁっ……」


 思わず息が漏れる。

 慌てて唇をかんで声を我慢する。

 だけど、彼の唇は、暖かくて気持ちがいい…… 


 私を抑えていた彼の手がはなれ、部屋着を捲りあげた。

 キャミソールの上から、彼の手が胸の膨らみに触れる……


「や、やめ……」


やめてと言いたいのに、口から漏れる声は甘いものへと変わってしまう。

その瞬間、するりと部屋着を脱がされた。
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