恋を忘れたバレンタイン
 やはり一日休むと細かい仕事がたまっている。
 ミーティングやら何やらに追われ、半日があっという間に過ぎてしまった。

 昼休みに入り、あえて彼の席は見ずに社食へと向った。

 毎日の事ながら、社食の席は混み合っている。すっと、空いた四人掛けのテーブルに手にしていたオムライスを置く。


「熱はもう下がったのかい? ここいい?」


「部長…… ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」

 私は、慌てて背筋を伸ばして頭を下げた。
 部長は、午前中外部での打ち合わせでいなかったので、挨拶も出来ていなかった。


「いやいや社内でも流行っているからね? 元気になってくれて良かったよ」

 部長は、テーブルに定食を置いて椅子に座った。

 私も部長に向き合うように座った。


「会議にも出て頂いて申し訳ありません」


「ああ…… あれだけ資料が纏まっていて、山田君への教育もしっかり出来ているから、俺なんて出る幕無かったよ」

 部長は手を合わせた後、箸へと手を伸ばした。


「そんな事…… 山田さんも、部長に助けて頂いたと言ってました」


 私も、スプーンを手にし、オムライスを口に入れた。


その時だ、


「部長、俺も隣いいですか?」


 後ろからの声に、まさかと思ったのだが……
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