恋を忘れたバレンタイン
 長い一日が終わりを迎える。

 定時を過ぎ、帰って行く人の姿が目立ち始める。気付けば、私の島には誰も居なくなっていた。

 隣の島を見ると、彼がパソコンに向かう姿がある。


 そのまま、私はデスクに座り仕事を続けた。定時を過ぎるのは当たり前の事。特に珍しい事ではない。

 でも、今の私は違っていた。
 どんなに仕事に集中しようとしても、意識は隣の島の彼にある。


 もし、まだ間に合うのなら……



 バレンタインデーの勇気と、ホワイトデーの力を私に貸して欲しい。



 例え、どんな結果になっても、今のままよりはマシだろう。
 きちんと向き合って終わりにされた方がいい。
 自分で、終わりにしておいて勝手な言い分だとは思う、


 だけど、捻くれた感情に支配されている私には、そんなに簡単に素直になれない、


 私は立ち上がると、人の居なくなったオフィスの中を、彼の座るデスクへと向った。
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