恋を忘れたバレンタイン
「だから?」

 私は、聞き返した。


「だから、自分が重くなるかもなんて気にするなよ……」


「えっ?」


「これからは、俺が上司になる事だってあるかもしれない。俺も、色々考えたんだ。俺が、のし上っていけば、美優が自分が重いなんて不安にならないんじゃないかって。
 だけどさ…… 大切な人を守ろうと思えば、重いと思うのは当たり前なんじゃない?」


「浦木君……」

 どうしよう? 

 やばい、胸が熱くなってきて、目が潤んで来てしまった。


「もちろん、これからも美優を守れるよう強くなるつもりだけど…… 重いと感じるのは、美優を大切に思うからだと思ってくれない? 一生、一緒に居たいから……」


 やばい、もうダメ……
 目から、涙が落ちだした。

 男の人の前で泣くなんて初めてだ……
 彼の手がスーッと伸びて、私の頭をあやすように撫でる。


「お腹空いてるんだろ? 早く食べよう?」

 照れ隠しの彼の優しい言葉だ。


 私は、テッシュをとり鼻をかんだ。
 こんな風に誰かと一緒にいるなんて、奇跡のように思えた。

< 69 / 114 >

この作品をシェア

pagetop