恋を忘れたバレンタイン
お風呂から出ると、彼が入れ替わりにお風呂へ向かった。

 一人になったリビングを見渡す。
食事している時から気になっていた場所で足を止めた。

テレビの横のラックの上に、あのチョコレートがぽつんと置いてあった。
あまり、余計な物の無い部屋のチョコレート。
なんだか不思議な感じがする。


 私は、チョコレートを手でクルクルと回してみる。

やっぱり、あの時のチョコだ……


 義理チョコが本命チョコになったみたいで、なんだか妙に恥ずかしくなった。


 みんな、美味しいって言ってたけど、どんな味がするのだろうか?


 こんな所に置いたまま食べないのも勿体ない。


 しばらく、チョコレートを指で転がしていたが……

 私は、チョコレートを持ち上げ、包をクルリと回した。
 中から、丸いチョコレートが出て来た。


 美味しそう……


 チョコレートを指でつまむと、パクリと口にくわえた。


 その時だ。
 ガチャリと、リビングのドアが開いた。
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