恋を忘れたバレンタイン
 えっ? 
 いつ言われたのだろうか? 
 全く記憶にない……

 
 私も、彼の耳もとに唇を近づけた。


「好きよ…… 始めて言うけどね……」


 彼は、少し驚いたように目を見開いた。


 だけど、好きと言ってしまったと同時に、胸の中の不安が鈍い音を立てる。

 こんな自分を受け入れてもらえた安心感と、この胸の暖かさを知ってしまった私は、彼の居ない道を歩けないかもしれない……


 今、私はどんな顔をしているのだろう?


 彼が、伺うように見た。
 
 そして、優しい笑みを見せた。


「言いましたね…… もう、一生逃げられませんよ。俺、一度決めたら絶対なんで……」


「えっ」

 まるで、私の不安を見抜いたような言葉だ……

 不思議なくらい、不安がすっと溶けていった。


「愛してます…… ずっと、前から……」

 彼は、私を熱い目で見つめた。胸の奥がきゅんと音を立てた。


「言ったわね…… 覚悟してね。私、一生離れないわよ。
 私も愛してる……」


 私を抱えたまま、彼の唇が重なった……


< 72 / 114 >

この作品をシェア

pagetop