恋を忘れたバレンタイン
俺が、彼女と初めて会ったのは、入社してまだ数か月の時だ。
厳しい関門を乗り切って、第一志望のこの会社に入社した。だが、希望していた会社生活と違い、営業部に所属した俺は、毎日業者に頭を下げたり、話を合わせへらへらしている先輩にただついて回っているだけだった。
そもそも、周りからクールと言われている俺にとっては苦痛でしかなかった。
仕事の面白さも無く、意味のない日々にもう辞めてもいいかもとさえ思っていた。
いつものように、先輩につき外出先から戻って来た時だ。
目の前に、颯爽と歩く彼女の姿が近付いてきた。
何度か、会議で顔を合わせた事はあったが、厳しい人だと言う印象しかなかった。俺と、三つしか違わないのに、仕事ぶりは高く評価されていた。
そのまま、すれ違うだけだと思っていた。
「お疲れ様」
だけど、彼女は、綺麗な笑顔を俺に向けた。
その笑顔は、厳しい彼女からは想像もつかないくらい屈託のないもので、不思議と俺の表情を緩ませた。
「お疲れ様です」
俺は、自然と笑顔を返していた。
それだけの事だった。
俺が、仕事という物に向き合うきっかけになったのは、その時の彼女の笑顔とお疲れ様の一言だった。
それから、どうせ辞めるなら何か一つでも得てからにしようと、自分で仕事を覚える事にした。
そして、相手先とも自ら笑みを見せ話しかけてみた。意外に、相手の反応も良く楽しい時を過ごせた。これが、営業スマイルなのかと初めて知った。
今まで、愛想なんて振り撒かなくても困る事は無かった。そんな俺にも、社会で生きて行く、人と係わるという事がやっと分かったのだ。
あの時の、彼女の笑顔がそれを教えてくれた気がした。それから営業成績も伸び、社内でも笑みが増え係わる人が増えてきた。
俺の会社生活が変わり出し始めた……
厳しい関門を乗り切って、第一志望のこの会社に入社した。だが、希望していた会社生活と違い、営業部に所属した俺は、毎日業者に頭を下げたり、話を合わせへらへらしている先輩にただついて回っているだけだった。
そもそも、周りからクールと言われている俺にとっては苦痛でしかなかった。
仕事の面白さも無く、意味のない日々にもう辞めてもいいかもとさえ思っていた。
いつものように、先輩につき外出先から戻って来た時だ。
目の前に、颯爽と歩く彼女の姿が近付いてきた。
何度か、会議で顔を合わせた事はあったが、厳しい人だと言う印象しかなかった。俺と、三つしか違わないのに、仕事ぶりは高く評価されていた。
そのまま、すれ違うだけだと思っていた。
「お疲れ様」
だけど、彼女は、綺麗な笑顔を俺に向けた。
その笑顔は、厳しい彼女からは想像もつかないくらい屈託のないもので、不思議と俺の表情を緩ませた。
「お疲れ様です」
俺は、自然と笑顔を返していた。
それだけの事だった。
俺が、仕事という物に向き合うきっかけになったのは、その時の彼女の笑顔とお疲れ様の一言だった。
それから、どうせ辞めるなら何か一つでも得てからにしようと、自分で仕事を覚える事にした。
そして、相手先とも自ら笑みを見せ話しかけてみた。意外に、相手の反応も良く楽しい時を過ごせた。これが、営業スマイルなのかと初めて知った。
今まで、愛想なんて振り撒かなくても困る事は無かった。そんな俺にも、社会で生きて行く、人と係わるという事がやっと分かったのだ。
あの時の、彼女の笑顔がそれを教えてくれた気がした。それから営業成績も伸び、社内でも笑みが増え係わる人が増えてきた。
俺の会社生活が変わり出し始めた……