恋を忘れたバレンタイン
「主任…… 俺の言った意味が、分かっていないんですね。でも、いいです。とにかく今日は帰りましょう。送って行きますから」


 彼女は、かなり具合が悪い。
 このまま置いて帰るなんて絶対に出来ない。


 俺は、無理矢理彼女に帰る支度をさせた。
 それでも、気丈に振る舞おうとする彼女を、半分無視して……


 やっと、オフィスを出たのに、また、どこかの部署の女子社員に捕まった。
 その瞬間、彼女が俺の腕からするりと逃げてしまった。

 俺は、チョコを差出した女子社員にろくに返事もせず、彼女の後を追った。


 ベンチに今にも倒れ込みそうな彼女を見つけ、咄嗟に抱え込んだ。



 タクシーに乗り込み、住所を言ったまま目を瞑る彼女を抱きかかえ、運転手に行先の変更をする。

 俺のマンジョンの住所だ。後で、何て言われようが構わない。
 今は、彼女の事しか考えられない。


 あまり状況が把握出来ていない彼女を、自分のマンションに連れ込んだ。

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