恋を忘れたバレンタイン
 力尽きて横たわる彼女を、愛おしく抱きしめる。

 彼女が病み上がりだったにも関わらず、感情のままに走ってしまった事を少しだけ後悔する。
 だが、まだまだ足りずに、もっと彼女に触れたい気持ちを抑えながら言った。


「ごめん……」


 彼女はうとうとし始めていた。

 熱の出た後の、彼女には辛かったのだろう……


 でも、俺は、気持を抑えられない。

 ちゃんと伝えたいから……


「好きです…… ずっと前から…… あなただけを見ていた……」



 彼女からは、なんの返事も帰ってこない。

 すぐに返事が欲しいとは思わないが、彼女から離れるつもりもなかった。


 俺は、一晩中彼女の眠る姿を見ながら彼女に触れていた。



 だから、朝方になって深い眠りに落ちてしまったのだ。

< 91 / 114 >

この作品をシェア

pagetop