恋を忘れたバレンタイン
「主任がご迷惑でなければ、打ち合わせの後で結構ですので。俺も、会議が重なっているので遅くなりますから……」


「そ、そうね…… 部長のご都合はどうかしら?」

 またもや、彼女は部長に振る。

 頼む、脱長……


「ああ、俺も構わんよ」


 ヨッシャー。


「私の時間が取れなかたら、部長と二人でお願します。申し訳ないけど……」

 だが彼女は、まだ断ろうとする。
 俺は、最後の手に出た。


「いいえ。主任、連絡先教えてもらえますか? 一応、時間と場所連絡させてもらうので……」


 せめて、彼女の連絡先を知りたい。
 俺には今日しかないのだ。


「ええ…… スマホ、デスクに置いてきちゃったので、後で伝えるわね」


 そんな手に乗るものか!
 あと、一押しと思った時だ。


「ああ、俺分かるから、浦木に伝えておくけどいいか?」

 俺は、部長に抱きつきたくなった。


「ええ、勿論」

 彼女の表情が一瞬引きつった気がしたが、今は取りあえず気にしない。


 彼女は、もう何も言わず俺達から去って行った。
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