春の雨はあたたかい
おじさんは17歳と聞いて困ったような顔をした。迷惑がられているのはしかたがない。それに、もしおじさんが襲い掛かっても、もう覚悟はできている。
それよりここにしばらく置いてもらえないだろうか。そればかり考えていお願いした。とうとうおじさんはあきらめたようで泊まることを承諾した。
「お風呂を沸かすから入りなさい。服が濡れているけど、女の子の着替えはないから、僕の男物でよかったらこれを着て」
トレーナーの上下と下着を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。しばらく着替えてなくて、使わせて下さい」
「先に入って。バスタオルはここにおいておくから。心配しないで、覗いたりしないから」
「すみません。入ります」
お風呂に入ると身体が温かくなってほっとした。お風呂から上がったけど、着替えのトレーナーも下着も男物だ。サイズも大きい。でも着替えがないし、着ていたものは濡れているし、着る決心をした。
男物の下着はなんか変な感じがする。私の身長は155㎝だから、おじさんは170㎝位かな。トレーナーはだぶだぶ、恥ずかしいけどしかたがない。
テレビを見ているリビングのおじさんにお礼をいうと、ジッと見られた。やっぱり恥ずかしい。それからおじさんがお風呂に入った。
1LDKのマンションと言っていたが、大きめのリビングダイニング、キッチン、バス、トイレ、それにもう1部屋ある。
2人でも十分住める。なんとしても住まわせてもらおう。独身の男性なら私を好きなようにしても良いといえば、住まわせてくれるだろう。そうすることに決めた。
すぐにおじさんはお風呂から出てきた。私のことが気になっているみたい。うまくいくかもしれない。
「君、名前は?」
「山田美香といいます」
「事情は話したくなってからでいいよ」
「じゃあ、寝るとするか」
「君は寝室で僕の布団で寝てください。僕はこのソファーで寝るから」
「私がソファーで寝ます」
「良いから、布団で寝て、風邪をひくといけないから」
「じゃあ、そうさせてもらいます。お休みなさい」
寝室の布団で寝てくださいと言われて、覚悟して敷いてくれた布団に入った。おじさんの匂いがするけど、いやな匂いとは思わなかった。おじさんが布団に入ってきても良いと思っていたけど、いつの間にか眠ってしまった。
【3月4日(金)】
熟睡したみたい。カーテンのせいで部屋に光が入ってこないので、朝が来たことに気が付かなかった。寝室のドアをノックする音で目が覚めた。一瞬自分がどこに居るのか分からなかった。そうか、おじさんの家の布団の中。寝た時のままで何もされていない。
「おはよう。起きて。僕は会社に出かけるから」
「ごめんなさい。気が付かなくて」
「疲れていたみたいだね。簡単だけど朝食を作ったから食べる?」
「ありがとうございます。いただきます」
「その前に、歯磨きをして顔を洗って。歯ブラシと櫛とタオルを置いてあるから」
「すみません」
私は慌てて洗面所へ行って、身支度を整えた。髪を後ろに束ねてポニーテイルにした。テーブルに着くと、おじさんは私をジッと見つめている。
明るいところで見ると、おじさんは結構若いみたい。昨晩は40歳前位には見えたけど30代前半?顔はイケメンというほどではないけれど、目が可愛い。どちらかというとほっとするタイプ?
「事情を話してくれる気になった?」
「・・・・・」
やっぱり、おじさんは気掛かりなんだ。どうしよう話そうか。
「これから出勤だから、あまり時間が取れないけど」
「このまま、ここにおいてもらえませんか?」
「事情を聴かないとできないよ。年頃の娘さんと同居なんて」
「少し考えさせてください。もう1日置いて下さい」
「分かった。もう1日くらいなら。明日から土曜、日曜と休みになるからゆっくり話を聞こう」
「ありがとうございます」
「もう少したったら出かけるけど、昼食は冷蔵庫のストッカーに冷凍食品があるから、適当に電子レンジで温めて食べたら良い。それから、夕食はまたお弁当を買ってくるから待っていて。それと部屋から外へ出ないでくれないか。今、他の人に見られると何かとまずいと思うからテレビでも見ていて。でも自分の家へ帰りたくなったら帰っていいから。ここに予備キーを置いておくから、鍵を掛けて、玄関の郵便箱に入れといてくれれば良い。部屋は309号だから間違えないで」
「分かりました」
おじさんは出勤した。おじさんは私に何もしなかった。それより、もう1日おいてくれて話を聞こうと言ってくれた。真面目そうな人だ。頼めばなんとかなるかもしれない。
それより、何とかしておいてもらえるように、掃除、洗濯くらいはしておこう。役に立つことが分かったらおいてもらえるかもしれない。でも勝手に部屋を掃除したりして怒られたりしたらどうしよう。いいや、もうその時は謝るだけ。
まず、朝食の後片付け、それから洗濯。丁度、自分の着てきたものを洗濯する必要があるし、おじさんの分もお洗濯。朝方は雨が残っていたけど、もう日が差してきている。夕方までには乾くと思う。
お風呂と洗面所のお掃除。次にリビングを掃除機でかけて、床を雑巾がけ、窓ふき、キッチンのシンクも磨く。寝室のお掃除、布団を上げて、ベランダで干す。
寝室はおじさんの書斎になっている。本棚には整然と本が並んでいる。机の上にパソコンとプリンター。書斎は整理整頓されていて隙が無い。これはさわると叱られると思うから、床掃除だけに留めておこう。でもお掃除していると気が紛れる。
冷蔵庫の中を整理。食パン、マーガリンなどの朝食用の食材がいろいろ入っている。調味料はひととおりある。棚には缶ビールが5本ならんでいる。お米もあるけど、昨日は夕食にお弁当を買ってきていた。自炊はあまりしていないみたい。
冷凍庫には冷凍食品がいっぱい入っているのには驚いた。おにぎり、お好み焼、ピザ、スパゲティナポリタン、シュウマイ、餃子、チャーハン、チキンライス、ピラフ、今川焼、たれ付きチキン、枝豆、うどん、豚肉、牛肉、鶏肉、それにアイスノン。好みが分かるけど、お子様が好きそうなものばかり?
食器棚の整理。ほとんど食器がなくてガラガラ。ごはん茶椀、お椀、どんぶり、大きなお皿、白い深い皿、茶碗、コップ、コーヒーカップとソーサーだけ。
あっても1つずつで2つと同じものがない。おひとり様分しかない。独身者に間違いない。彼女もいないのに違いない。どこにも女性の痕跡が全くないので間違いない。これは好都合かも?
お昼になったので、封が切られて半分残っていた冷凍ピラフをいただいた。あまり食欲がない。言われたとおり、テレビを見る。おいてもらえるか心配。
夕方、洗濯物を取り込んで、部屋の中をもう一度確認した。随分きれいになった。掃除したのが分かると思う。
昨日着ていたものが乾いたので着替える。自分のものがやはりぴったりするけど、着の身着のままで一着しかない。あとはおじさんが帰って来るのを待つだけ。昨日と同じころなら9時過ぎになるかもしれない。
それよりここにしばらく置いてもらえないだろうか。そればかり考えていお願いした。とうとうおじさんはあきらめたようで泊まることを承諾した。
「お風呂を沸かすから入りなさい。服が濡れているけど、女の子の着替えはないから、僕の男物でよかったらこれを着て」
トレーナーの上下と下着を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。しばらく着替えてなくて、使わせて下さい」
「先に入って。バスタオルはここにおいておくから。心配しないで、覗いたりしないから」
「すみません。入ります」
お風呂に入ると身体が温かくなってほっとした。お風呂から上がったけど、着替えのトレーナーも下着も男物だ。サイズも大きい。でも着替えがないし、着ていたものは濡れているし、着る決心をした。
男物の下着はなんか変な感じがする。私の身長は155㎝だから、おじさんは170㎝位かな。トレーナーはだぶだぶ、恥ずかしいけどしかたがない。
テレビを見ているリビングのおじさんにお礼をいうと、ジッと見られた。やっぱり恥ずかしい。それからおじさんがお風呂に入った。
1LDKのマンションと言っていたが、大きめのリビングダイニング、キッチン、バス、トイレ、それにもう1部屋ある。
2人でも十分住める。なんとしても住まわせてもらおう。独身の男性なら私を好きなようにしても良いといえば、住まわせてくれるだろう。そうすることに決めた。
すぐにおじさんはお風呂から出てきた。私のことが気になっているみたい。うまくいくかもしれない。
「君、名前は?」
「山田美香といいます」
「事情は話したくなってからでいいよ」
「じゃあ、寝るとするか」
「君は寝室で僕の布団で寝てください。僕はこのソファーで寝るから」
「私がソファーで寝ます」
「良いから、布団で寝て、風邪をひくといけないから」
「じゃあ、そうさせてもらいます。お休みなさい」
寝室の布団で寝てくださいと言われて、覚悟して敷いてくれた布団に入った。おじさんの匂いがするけど、いやな匂いとは思わなかった。おじさんが布団に入ってきても良いと思っていたけど、いつの間にか眠ってしまった。
【3月4日(金)】
熟睡したみたい。カーテンのせいで部屋に光が入ってこないので、朝が来たことに気が付かなかった。寝室のドアをノックする音で目が覚めた。一瞬自分がどこに居るのか分からなかった。そうか、おじさんの家の布団の中。寝た時のままで何もされていない。
「おはよう。起きて。僕は会社に出かけるから」
「ごめんなさい。気が付かなくて」
「疲れていたみたいだね。簡単だけど朝食を作ったから食べる?」
「ありがとうございます。いただきます」
「その前に、歯磨きをして顔を洗って。歯ブラシと櫛とタオルを置いてあるから」
「すみません」
私は慌てて洗面所へ行って、身支度を整えた。髪を後ろに束ねてポニーテイルにした。テーブルに着くと、おじさんは私をジッと見つめている。
明るいところで見ると、おじさんは結構若いみたい。昨晩は40歳前位には見えたけど30代前半?顔はイケメンというほどではないけれど、目が可愛い。どちらかというとほっとするタイプ?
「事情を話してくれる気になった?」
「・・・・・」
やっぱり、おじさんは気掛かりなんだ。どうしよう話そうか。
「これから出勤だから、あまり時間が取れないけど」
「このまま、ここにおいてもらえませんか?」
「事情を聴かないとできないよ。年頃の娘さんと同居なんて」
「少し考えさせてください。もう1日置いて下さい」
「分かった。もう1日くらいなら。明日から土曜、日曜と休みになるからゆっくり話を聞こう」
「ありがとうございます」
「もう少したったら出かけるけど、昼食は冷蔵庫のストッカーに冷凍食品があるから、適当に電子レンジで温めて食べたら良い。それから、夕食はまたお弁当を買ってくるから待っていて。それと部屋から外へ出ないでくれないか。今、他の人に見られると何かとまずいと思うからテレビでも見ていて。でも自分の家へ帰りたくなったら帰っていいから。ここに予備キーを置いておくから、鍵を掛けて、玄関の郵便箱に入れといてくれれば良い。部屋は309号だから間違えないで」
「分かりました」
おじさんは出勤した。おじさんは私に何もしなかった。それより、もう1日おいてくれて話を聞こうと言ってくれた。真面目そうな人だ。頼めばなんとかなるかもしれない。
それより、何とかしておいてもらえるように、掃除、洗濯くらいはしておこう。役に立つことが分かったらおいてもらえるかもしれない。でも勝手に部屋を掃除したりして怒られたりしたらどうしよう。いいや、もうその時は謝るだけ。
まず、朝食の後片付け、それから洗濯。丁度、自分の着てきたものを洗濯する必要があるし、おじさんの分もお洗濯。朝方は雨が残っていたけど、もう日が差してきている。夕方までには乾くと思う。
お風呂と洗面所のお掃除。次にリビングを掃除機でかけて、床を雑巾がけ、窓ふき、キッチンのシンクも磨く。寝室のお掃除、布団を上げて、ベランダで干す。
寝室はおじさんの書斎になっている。本棚には整然と本が並んでいる。机の上にパソコンとプリンター。書斎は整理整頓されていて隙が無い。これはさわると叱られると思うから、床掃除だけに留めておこう。でもお掃除していると気が紛れる。
冷蔵庫の中を整理。食パン、マーガリンなどの朝食用の食材がいろいろ入っている。調味料はひととおりある。棚には缶ビールが5本ならんでいる。お米もあるけど、昨日は夕食にお弁当を買ってきていた。自炊はあまりしていないみたい。
冷凍庫には冷凍食品がいっぱい入っているのには驚いた。おにぎり、お好み焼、ピザ、スパゲティナポリタン、シュウマイ、餃子、チャーハン、チキンライス、ピラフ、今川焼、たれ付きチキン、枝豆、うどん、豚肉、牛肉、鶏肉、それにアイスノン。好みが分かるけど、お子様が好きそうなものばかり?
食器棚の整理。ほとんど食器がなくてガラガラ。ごはん茶椀、お椀、どんぶり、大きなお皿、白い深い皿、茶碗、コップ、コーヒーカップとソーサーだけ。
あっても1つずつで2つと同じものがない。おひとり様分しかない。独身者に間違いない。彼女もいないのに違いない。どこにも女性の痕跡が全くないので間違いない。これは好都合かも?
お昼になったので、封が切られて半分残っていた冷凍ピラフをいただいた。あまり食欲がない。言われたとおり、テレビを見る。おいてもらえるか心配。
夕方、洗濯物を取り込んで、部屋の中をもう一度確認した。随分きれいになった。掃除したのが分かると思う。
昨日着ていたものが乾いたので着替える。自分のものがやはりぴったりするけど、着の身着のままで一着しかない。あとはおじさんが帰って来るのを待つだけ。昨日と同じころなら9時過ぎになるかもしれない。