春の雨はあたたかい
7.近くに転校できそう
【3月29日(火)】
学校から、田園調布にある高校の転入試験の書類が届いた。二人で山崎先生にお礼の電話をかけた。
山崎先生からは、4月4日(月)に願書出願、5日(火)に試験及び合格発表、合格した場合は6日(水)正午までに入学手続きを終えることになっているので必要書類を準備することと、事前に高校を訪問しておくこと、その時には佐藤先生に連絡するように言われた。佐藤先生とは親交があるので事情を説明しておいたとのことだった。
【3月30日(水)】
翌日、圭さんが会社から佐藤先生に電話して学校訪問について相談してくれた。佐藤先生は男の先生だったとか。そして4月1日(金)の午前11時に2人で訪問することになった。圭さんは午前中会社を休んでくれる。
【4月1日(金)】
高校は池上線御嶽山駅から徒歩6分とかなり近い。10時30分に家を出て二人で向かう。入口で佐藤先生に会いに来たことを伝えると先生は玄関まで迎えに来てくれた。案内されて応接室へ。やはり女性の副校長の二人との打合せとなった。圭さんが名刺交換をする。
「山田美香と保護者の石原圭です。美香に転校試験を受けさせていただけるとのこと、ありがとうございます。ご挨拶に参りました。よろしくお願いいたします。山崎先生から事情を説明していただいていると思いますが」
「山崎先生から話は聞いています。石原さんはしっかりした方だから、会って話されると良いと言われています。事情は副校長も承知しています。試験の結果から入学が許可されれば、山田さんは3年生になりますが、保護者として、大学への進学についてはどのようにお考えですか?」
「本人の希望にもよりますが、希望すればさせてやりたいと思っています」
「山田さんはどうですか?」
「経済的なこともありますので、石原さんと相談して決めたいと思っています」
「山田さんは学業が優れているので、できれば進学させてあげられると良いのですが」
「保護者という立場になりましたので、できるだけのことはする覚悟です」
「それから、お二人の同居については、学校としても承知しておりますが、他の生徒への配慮から、内密にしておきますので、お二人からも口外されないようにしてください」
「分かりました」
「あの、学校の制服ですが、まだ、準備ができていないので、前の学校の制服を着ていても良いですか?」
「そうですね。かまいません。それから転校の試験は頑張って下さい」
打合せが済んだので、二人に挨拶して学校を出た。春休み中で校舎内に生徒はいないけど、運動場でクラブ活動をしている。
「学校ではクラブ活動をしたらいい」
「私は帰宅部で良いのです。これまでもそうだったから」
「僕の帰りは遅くなるから、クラブ活動は十分できる。今しかできないことがあるからやっておいた方がいい」
「考えてみます」
「それから、ごめん、制服については忘れていた。すぐに新しい制服を注文しよう」
「あと1年だから、今のままでよいと思っています。制服って意外と高いんです。これをクリーニングに出せば十分です」
「でも、周りから変にみられていじめにでもあったら、大変だ。そっちの方が心配だ」
「今の私は、失うものはすべて失って、もう失うものがないから、怖いものなんかないんです。圭さん以外は」
「怖い?僕はできるだけ君に優しくしているつもりだけど」
「圭さんに嫌われて追い出されるのが怖いんです」
「同居させると言ったけど男に二言はない。それに美香ちゃんが家にいると楽しいし、夕食もおいしいし、毎日帰宅するのが楽しみになった。追い出す訳がないだろう」
「嫌われないように頑張ります」
「進学のことだけど、まあ、よく考えてみて、できるだけのことはするから」
「ありがとうございます。そのお気持ちだけでありがたいです」
駅から二人電車に乗って、私は長原で降りて、スーパーで買い物、圭さんはそのまま出勤した。
圭さんに「美香ちゃんが家にいると楽しいし、夕食もおいしいし、毎日帰宅するのが楽しみになった」と言われて本当に嬉しかった。
【4月2日(土)】
翌日の土曜日には、学用品などを二人一緒に買いに行った。通学定期は身分証明書がまだないので取りあえずSuicaを買ってもらった。体操着などは前の学校のものがあるから良いと断った。
「必要なものがあったら遠慮しないで。保護者として美香ちゃんに恥ずかし思いや寂しい思いをさせたくないから。あとからお小遣いを渡すから必要なものは自分で買って」
「それから美香ちゃんにスマホを買おうと思っているけど」
「今までなくてやってきたので必要ないです」
「学校で友達とLineをしたりしないと仲間外れになるよ」
「私はもう怖いものはありません。仲間に入れてほしいと思いませんし、仲間に外れも気にしませんから」
「一番の理由は僕が美香ちゃんに連絡するために持っていてほしいんだ」
「家に固定電話がないから、急な仕事などで遅くなるときなど連絡できないと困るから。それにいつでも連絡がとれると僕も安心だから」
「それなら買ってください」
買うなら、圭さんとの連絡だけだから、料金が一番安いもので良いので、格安料金のものを探して契約してもらった。
いらないと言ってはいたけど、内心はすごく嬉しかった。すぐに圭さんのスマホに試しに電話した。これで圭さんといつも繋がっていられると思うと安心。
【4月4日(月)5日(火)6日(水)】
4月4日(月)に準備しておいた願書を出願、5日(火)に試験を受け合格を確認。圭さんが6日の午前中に休暇を取って私の転校手続きをしてくれた。ありがとう。
学校から、田園調布にある高校の転入試験の書類が届いた。二人で山崎先生にお礼の電話をかけた。
山崎先生からは、4月4日(月)に願書出願、5日(火)に試験及び合格発表、合格した場合は6日(水)正午までに入学手続きを終えることになっているので必要書類を準備することと、事前に高校を訪問しておくこと、その時には佐藤先生に連絡するように言われた。佐藤先生とは親交があるので事情を説明しておいたとのことだった。
【3月30日(水)】
翌日、圭さんが会社から佐藤先生に電話して学校訪問について相談してくれた。佐藤先生は男の先生だったとか。そして4月1日(金)の午前11時に2人で訪問することになった。圭さんは午前中会社を休んでくれる。
【4月1日(金)】
高校は池上線御嶽山駅から徒歩6分とかなり近い。10時30分に家を出て二人で向かう。入口で佐藤先生に会いに来たことを伝えると先生は玄関まで迎えに来てくれた。案内されて応接室へ。やはり女性の副校長の二人との打合せとなった。圭さんが名刺交換をする。
「山田美香と保護者の石原圭です。美香に転校試験を受けさせていただけるとのこと、ありがとうございます。ご挨拶に参りました。よろしくお願いいたします。山崎先生から事情を説明していただいていると思いますが」
「山崎先生から話は聞いています。石原さんはしっかりした方だから、会って話されると良いと言われています。事情は副校長も承知しています。試験の結果から入学が許可されれば、山田さんは3年生になりますが、保護者として、大学への進学についてはどのようにお考えですか?」
「本人の希望にもよりますが、希望すればさせてやりたいと思っています」
「山田さんはどうですか?」
「経済的なこともありますので、石原さんと相談して決めたいと思っています」
「山田さんは学業が優れているので、できれば進学させてあげられると良いのですが」
「保護者という立場になりましたので、できるだけのことはする覚悟です」
「それから、お二人の同居については、学校としても承知しておりますが、他の生徒への配慮から、内密にしておきますので、お二人からも口外されないようにしてください」
「分かりました」
「あの、学校の制服ですが、まだ、準備ができていないので、前の学校の制服を着ていても良いですか?」
「そうですね。かまいません。それから転校の試験は頑張って下さい」
打合せが済んだので、二人に挨拶して学校を出た。春休み中で校舎内に生徒はいないけど、運動場でクラブ活動をしている。
「学校ではクラブ活動をしたらいい」
「私は帰宅部で良いのです。これまでもそうだったから」
「僕の帰りは遅くなるから、クラブ活動は十分できる。今しかできないことがあるからやっておいた方がいい」
「考えてみます」
「それから、ごめん、制服については忘れていた。すぐに新しい制服を注文しよう」
「あと1年だから、今のままでよいと思っています。制服って意外と高いんです。これをクリーニングに出せば十分です」
「でも、周りから変にみられていじめにでもあったら、大変だ。そっちの方が心配だ」
「今の私は、失うものはすべて失って、もう失うものがないから、怖いものなんかないんです。圭さん以外は」
「怖い?僕はできるだけ君に優しくしているつもりだけど」
「圭さんに嫌われて追い出されるのが怖いんです」
「同居させると言ったけど男に二言はない。それに美香ちゃんが家にいると楽しいし、夕食もおいしいし、毎日帰宅するのが楽しみになった。追い出す訳がないだろう」
「嫌われないように頑張ります」
「進学のことだけど、まあ、よく考えてみて、できるだけのことはするから」
「ありがとうございます。そのお気持ちだけでありがたいです」
駅から二人電車に乗って、私は長原で降りて、スーパーで買い物、圭さんはそのまま出勤した。
圭さんに「美香ちゃんが家にいると楽しいし、夕食もおいしいし、毎日帰宅するのが楽しみになった」と言われて本当に嬉しかった。
【4月2日(土)】
翌日の土曜日には、学用品などを二人一緒に買いに行った。通学定期は身分証明書がまだないので取りあえずSuicaを買ってもらった。体操着などは前の学校のものがあるから良いと断った。
「必要なものがあったら遠慮しないで。保護者として美香ちゃんに恥ずかし思いや寂しい思いをさせたくないから。あとからお小遣いを渡すから必要なものは自分で買って」
「それから美香ちゃんにスマホを買おうと思っているけど」
「今までなくてやってきたので必要ないです」
「学校で友達とLineをしたりしないと仲間外れになるよ」
「私はもう怖いものはありません。仲間に入れてほしいと思いませんし、仲間に外れも気にしませんから」
「一番の理由は僕が美香ちゃんに連絡するために持っていてほしいんだ」
「家に固定電話がないから、急な仕事などで遅くなるときなど連絡できないと困るから。それにいつでも連絡がとれると僕も安心だから」
「それなら買ってください」
買うなら、圭さんとの連絡だけだから、料金が一番安いもので良いので、格安料金のものを探して契約してもらった。
いらないと言ってはいたけど、内心はすごく嬉しかった。すぐに圭さんのスマホに試しに電話した。これで圭さんといつも繋がっていられると思うと安心。
【4月4日(月)5日(火)6日(水)】
4月4日(月)に準備しておいた願書を出願、5日(火)に試験を受け合格を確認。圭さんが6日の午前中に休暇を取って私の転校手続きをしてくれた。ありがとう。