海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
出会い、そして始まり
見上げる空に、果てはない。
けれど大地はいつかどこかで途切れ、海に変わる。では、海は?
海に、果てはあるのだろうか?
あれは私がまだ、六つか七つの時――。
「なぁ父ちゃん、海の先はどこにつながってるんだ? 父ちゃんは昔、祖父ちゃんと外国を回っていたんだろ?」
私は風呂で、父ちゃんの背中を流しながら尋ねた。私は父ちゃんの広くて大きな背中が好きだった。
「こらエレン、またそんな言葉づかいをして。母さんが嘆くぞ」
だけど本当は背中より、優しい父ちゃん自身がもっともっと、大好きだった。
父ちゃんはなんでも知っていて、誰よりも強くって、とびっきり優しい。そんな父ちゃんを、私はいつも自慢にしてた。
「いいじゃんか。最近の母ちゃん、言葉づかいもそうだけど、お行儀よくしなさいだのなんだのうるさくって、正直ちょっと息が詰まるよ。今日の風呂だってさ、私が父ちゃんと入ってくるって言ったら、もうひとりで入れるでしょうって小言を言われたんだ」
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