海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 悪鬼のごとく表情をゆがめたブラッドが、カツカツと靴音を響かせて浴室のタイルを踏み鳴らす。
 ……風呂とは全裸で、当然足元とて裸足で入るが常識。なのにブラッドは隙なく侍従服に身を包み、長靴の踵で容赦なく我が屋敷の風呂場タイルを攻撃する。
 やはり俺は、どこかおかしいに違いない。
 俺の間近までやってきたブラッドの幻影が、おもむろに身を乗りだし、腕を湯船に突っ込んだ。
 ――キュポンッ。
 ん? キュポン?
 ――ズズッ、ズズズズゥッ。
「お、お湯がっ!?」
 俺が今後を憂い、思考を明後日の方向に巡らせているのをよいことに、なんとブラッドの幻影は風呂の栓を抜くという暴挙に及んだ!
 段々と湯がかさを減らす浴槽の中で、俺は反射的に股間を隠して身を縮めた。い、いかん、湯量が股間よりも少なく……っ!
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