海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
とにもかくにも股間だけでも隠さねばと、手近な湯桶で股間を隠した。
すると直後、反対の手をむんずと取られる。
ハッとして目線を上げれば、この世の恐ろしい物をすべて寄せ集めたかのような顔をしたブラッドが、俺におどろおどろしい目を向けていた。
思わず、ゴクリと唾をのみ込んだ。
お湯が抜かれたことで、風呂場に充満していた湯気も霧散していた。そうすれは浮かび上がるブラッドの姿は、とても幻影とは思えぬほど忠実に再現されていた。
こめかみに浮かぶ血管の一本一本までもが脈動感にあふれている……。
「……ブラッド、もしかしてそなた、本物か?」
よくよく見ればブラッドのうしろ、古参の使用人らが申し訳なさそうに、そしてその一部の人間はあきれ果てたように、風呂場を覗き込んでいた。
「アーサー提督、あなたの頭が長湯でゆで上がってしまったのか、もともとこの程度であったのかは大変に悩ましいところですが今はさて置き、さすがに陛下が首を長くしておりましょう! 参りますぞ!」