海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 なるほど、そうであったか。俺の長湯に業を煮やしたブラッドが、我が家の風呂場まで押しかけてきたというのが事の次第であった。
 事務官という分類にくくられる侍従とは思えぬ剛腕で、ブラッドが俺を浴槽から引きずり上げる。
「ぅおっ!?」
そのままブラッドは、容赦なく濡れ髪のままの俺を風呂場から連行した。
「待てブラッド! せめて下着をはかせてくれ!」
「アーサー提督! いい加減にしてください! もうわしは一分だって待ちはいたしません!」
「冷静になれブラッド! どう考えても手桶で前を隠したまま、陛下に目通りできるわけがなかろう! それに俺は下着きをはくのに一分もかからん! ものの数秒ではける!」
 なんとかブラッドを説き伏せ下着を身につけた俺は、迎えの馬車に押し入れられた。
 馬車が出立の際に、親の代から勤めるすご腕の家令が、俺の衣服を車窓から放り込んだのは大変にいい仕事だった!
 そうして俺がふやけた体になんとか衣服を身につけたところで、馬車は王城正門を堂々とくぐる。馬車が停車すればブラッドに車内から蹴り出され、今度は追い立てられるように陛下の自室に走った。
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