海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「船長もご存知の通り、乗組員は我が海軍の中でも厳しい審査を切り抜けた精鋭ばかり。とはいえ、長期航海が実質的に初めての若い海兵もいます。航海中の船というのは、通常の状態とは切り離されたある種の異空間です。乗組員たちも、平常時ならば海軍の長たるあなたに絶対の信頼を寄せ、服従を誓っています。しかし長い海上生活にあっては、普通ではあり得ない行動も、憂慮する必要があるのです」
 返す言葉に窮した。
 海洋進出がこうも盛り上がりをみせるようになったのは、ここ数十年の話。
 バーミンガー海軍のこれまでの任務は、近海での治安維持活動が主。年単位の航海というのは、海軍でもそうそう頻回ではない。ゆえに海軍に所属しながら、長期間の航海経験に乏しい海兵も多くいるのが現状だった。
「ですから今一度、周囲の目を意識した行動をお願いいたします」
 思い返してみれば、心技体に絶対の自信がある俺ですら、初めて長期航海に出た時は、重苦しい閉塞感を覚えたことを記憶している。
「ふむ、よくわかった。今後は人目を意識した言動を心がけよう」
「ハッ」
 なんだ!? 俺の殊勝な心がけを、なぜかマーリンが鼻で笑った!
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