海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
エレンが慌てた様子で俺の背中をさする。
それに伴って、鼻血がドブドブと噴きだして、血だまりをつくる。
「えっ!? アーサーさん大丈夫!?」
ますます忙しなく、背中をさするエレンの手に、俺はうっとりと夢心地だ。
「……エレン、ここは俺に任せて。エレンは手桶と雑巾を持ってきてくれますか?」
なんだと!? すると俺の夢心地に水を差す、まさかの伏兵が現れた!
マーリンの奴はまだ、副船長室に戻っていなかったのか! とんだ伏兵の襲来に、俺の夢心地が一瞬で霧散する。
「エレン、こういった処置は俺の方が心得ていますから、安心して任せてください」
……頼むエレン、どうか行かないでくれ。この場に俺とマーリンのふたりを残して、行ってくれるな。
「わかった! すぐに持ってくるよ!」
俺の願いも虚しく、エレンは疾風のごときすばやさで船内に消えた。
……ぁあ、エレン。
この後、俺の鼻血は口にするのもはばかられるマーリンの乱暴な処置により、一瞬で止められた。