海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
ハラハラの海上戦



 航海に出て、初めて体験するしけ。
 その猛威は、想像以上だった。けれど未明からずっと、転覆するんじゃないかという揺れにさらされ続ければ、感覚というのは段々と鈍化する。
「アーサーさん、しけって怖いんだな。段々治まってきたとはいえ、まだまだすごい揺れだなぁ」
「なんだエレン? 揺れが怖くて眠れないのなら、俺が寝付くまで抱いていてやるぞ?」
 アーサーさんが自分の包まる毛布に隙間をつくり、ポフポフと叩いてみせる。
「……馬鹿言えい。俺は別に怖いんじゃなくて、単に状況を伝えただけだよ」
「そうか。もし眠れなければ強がらずに、いつだって俺の毛布に入ってきていいんだからな」
 アーサーさんはどことなくしょんぼりと残念そうに、毛布の隙間を塞いだ。
「……おやすみアーサーさん」
 最近の私は、どこかおかしい。その感覚は深堀りをしすぎれば、なにかが変わってしまう気がして、あえて考えないようにしている。
 だけどひとつだけ、たしかなことがある。最初にアーサーさんと共寝を始めた時は、父ちゃんと寝るようなものだって思えば、別段違和感もなく眠りの世界に旅立てた。
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