海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 もしかすれば、こんな状況下にあって不謹慎な感情を抱いた私に罰があたったのではないかと本気で思った。アーサーさんは、一気に顔色をなくした私の不安を取り払おうとでもするみたいに、抱きしめる腕に力をこめた。
「エレン、心配しなくていい。こちらも掌砲長以下、掌砲手が発射応戦の準備をしている」
 けれどアーサーさんの腕の強さより、今はもたらされた言葉に衝撃が走る。
「え、ちょっと待って。だって、この船は商船だろう? 甲板にも、そんな物騒なものは積んじゃいないだろう?」
「この大型帆走船は商船を装っているが、その実、最新の軍艦だ。甲板上層に重い砲は積まず、下層甲板から舷側に開けた窓から発射する。どんな船の攻撃にだろうが、この船は負けない」
 この船が、軍艦?
「……嘘、だろう?」
「俺はエレンに、嘘はつかない」
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