海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 アーサーさんが私に向ける言葉と眼差しがあまりにも真摯で、ドキリと胸が跳ねた。
「エレン、俺の言葉をよく聞いてくれ。本当の俺は、商船の船長じゃない。俺はバーミンガー王国海軍提督で、違法航行の元締めを海上で捕縛せよとの密命を受けて航行していた。この状況下での船への攻撃は、違法航行の元締めに追跡が割れた可能性が考えられる」
 ――ドォンッ!
「あっ!」
「エレン!」
 その時、再びドォンという音と共に、突き上げるような揺れが襲った。
 二度目の揺れは一度目よりも大きくて、アーサーさんの腕に抱かれていなければ、間違いなく船壁に叩きつけられていただろう。
 素人の私にも、砲弾が船の近くに着弾しているだろうことは容易に察することができた。
「エレン、本艦は艦砲で狙われている。船はこのまま海上戦に突入する」
 アーサーさんから聞かされた、海上戦という言葉の生々しさに、息をのんだ。
 だけど私は緊張はあれど、冷静さを失ってはいなかった。
 アーサーさんの穏やかな瞳が、大丈夫だと思わせてくれる。この緊迫した状況下にあっても、いつもと寸分も変わらないアーサーさんの様子が心強かった。
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