海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「アーサーさんが空けてくれるまで静かにここにいるから、俺のことは心配しないで大丈夫! だからアーサーさんは船長の、いや、海軍提督としての任務にあたって? 皆がアーサーさんの指示を待っているだろう?」
「エレン! なるべく早く海上戦を制して、エレンのもとに戻ってくる!」
 アーサーさんは最後に私の頭をひとなでし、そっと衣装櫃の蓋を閉めた。
 衣装櫃の蓋を閉じられれば、中は寸分も明かりが入らない真っ暗闇になった。だけど不思議と、真っ暗で窮屈な中に押し込められたこの状況を、恐ろしいとは思わなかった。
 だってアーサーさんは私に、嘘はつかないと言った。ならばアーサーさんはいくらもしないうち、舞い戻ってきて、再び蓋を開けてくれる。しかもその時は、いっぱいの抱擁とワシャワシャと頭をなでるおまけ付きに違いない。
 想像すれば、知らず頬が緩んだ。

 ドォン、ドォンと痺れるような音と揺れを幾度も感じた。
 雑多と人や物が慌ただしく行き交う音も、何度も拾った。その間も私はただじっと身を丸め、膝を抱いていた。
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