海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 その時、老爺の腕がわずかに緩む。私はその一瞬を見逃さず、身をよじって老爺の腕を脱した。
 カラン――。
 たまたま床に落ちていたペンダントを蹴るような格好で着地した。
 慌てて目線を落とせば、蹴った衝撃でか、ペンダントに下げている革袋の口が薄く開いてしまっていた。
 急いで拾おうと手を伸ばす。けれど、私よりも一瞬早く、老爺の手がペンダントを掴み上げてしまう。
「返せよ! 俺のだぞ!!」
 取り返そうと、老爺の腕にすがった。けれど老爺は私の制止など歯牙にもかけず、掴み上げた革袋の中身を勝手に覗いた。
「この紋章は……っ!」
「なに見てんだよ!? 返せ、返せーっ!」
 長身の老爺の手の中の、お守りの中身は私の位置からは見えなかった。けれど、大事なお守りの中身を勝手に暴かれてしまった衝撃は大きかった。
「……勝手に取り上げて、すまなかったな。これは安易に人目にさらさぬよう、きちんとしまっておきなさい」
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