海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
え? なぜか老爺は、きっちり革袋の口を閉じたペンダントを私の首に下げてよこした。
あまりにも簡単に戻されたことに拍子抜けして見上げれば、老爺は潤んだ目をして私を見下ろしていた。
「鬼熊の戦神の紋章を目にするなど、実に三十五年振りにもなろうか……」
なんだって? 聞き慣れない単語は、うまく意味を結ばずに素通りした。
老爺のつぶやきの意味はわからなくとも、私を強く見つめるブルーの瞳に、胸の奥、深いところが刺激される。どこか懐かしいような、郷愁を誘われるような、そんな不思議な感覚が湧き上がる。
「なぁ爺さん、もしかして俺ら、前にどっかで会ってるっけか?」
湧き上がる感情のまま口にすれば、爺さんは目を丸くして……泣いた!?
「ちょっ!? なんだよ爺さん、なんで泣くんだよ!?」
本当は爺さんの腕を脱したら、一目散に逃げようと思っていた。
だけど爺さんがあまりにもさめざめと泣くものだから、思わずその場に留まって、爺さんの腕をトントンとさする。
「……十八歳で鬼熊の戦神に託したヘレネは、すでに初老に達する。その当時のヘレネに生き写しのようなそなた。……そなたはエレン、エレンだ!」