海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 すると突然、爺さんが腕をさすっていた私の手を掴んで引き寄せた。
「ぅわぁあっ!」
 気がつけば、私は爺さんの胸にギュウギュウと抱きしめられていた。
「ちょっ! 爺さん、苦しっ」
 老爺とは思えぬ丸太のような筋肉隆々の腕でギリギリとしめ上げられて、私は息も絶え絶えに訴える。
「エレン! エレンッ!! 一年前に見たそなたの絵姿はこうではなかった。輝くばかりの髪や、珠のような肌が見るも無残になったばかりか、粗暴な言葉遣いに、優雅さの欠片もない所作! そなたの身の上に、いったいどのような苦労が降りかかったのだ!? なにがそなたを、そうも変えてしまったのか!」
 けれど、すっかり興奮しきった爺さんは、まるっきり取り合わない。どころか、苦しいながらも耳に聞こえてくる発言は、失礼極まりない。
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