海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 爺さんの万力のような締め上げに、いよいよ意識が朦朧とし始めた。

 ――バッターンッ!
「エレン! 無事かっ!?」
 その時、ついに待ち人は現れた。
 祈るような気持ちで訪れを待ち侘びていたその人は、室内の光景を目にするや悪鬼のように顔をゆがめ、怒りの炎を燃え上がらせた。
「おのれ、エレンを離せーー!」
 舶刀を振りかぶり、咆哮をあげながらアーサーさんが迫る。それを目にした爺さんは、私をドンッと突き飛ばした。
 私はその勢いを殺しきれずに、大きくうしろにたたらを踏んだ。だけど視線だけはアーサーさんからはずさなかった。いや、はずすことができなかった。
 アーサーさんは『エレンを離せ』と、そう声を上げた。だから爺さんが私を放したことで、事態は収束するかに思えた。
 しかし、アーサーさんの怒りの温度は下がらない。どころかアーサーさんは、鬼気迫る様相で、握った舶刀を爺さん目がけて振り下ろす。
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